『源泉豊饒』ゲッレールト温泉 「東のパリ」と呼ばれる首都ブダペストは、広く悠々流れる国際河川ドナウ川を中心に広がる美しい街。
夜のライトアップによって照らし出されるドナウに掛かる橋々の姿は、標高235メートルのゲッレルートの丘から眺めると「ドナウの真珠」と形容されるに相応しい光景である。時は2月、いよいよ2日間のハンガリー温泉紀行が始まる。某ガイドブックによるとハンガリーには450箇所の温泉が沸いており、ブダペストだけでも128箇所で温泉が沸き、32箇所の温泉浴場が登録されているとある。地下にミネラル分を多く含んだ源泉が、ハンガリーが位置するカルパチア盆地に豊富にあるということが温泉の多さを物語っている。ブダペスト市内には6つの代表的な温泉(ルダシュ温泉・ゲッレールト温泉・セーチェー二温泉・ラーツ温泉・キラーイ温泉・そしてルカーチ温泉)がある。
今回はセーチェー二温泉、ゲッレールト温泉、そしてへービーズ(ハンガリー西部)にある温泉湖を訪れることにした。
                                                                    出典:ハンガリー政府観光局
『屋外浴場の醍醐味』
ブダペスト市内の地下鉄1号線のセーチェー二・フルドー駅を下車すると目の前にセーチェー二温泉がある。聞くところによると、1909年より4年の歳月を経て建てられたというネオ・バロック様式の温泉だ。建物は雄大荘重で古代の遺跡のような石造りだ。建物敷地内裏側に広い円形状の屋外浴場がある。浴場サイズは日本の一般的な温泉の浴場サイズの比ではない。外気はかなり肌寒く感じられるのだが、もくもくと湯気の盛んに舞う浴場は、朝9時だというのに既に水着を着た老若男女で埋め尽くされていた。ある中年男性達は浴槽の淵を陣取りチェスに熱中し、あるカップルはマグカップ片手に延々お喋りをしている。因みにお湯の温度は、人肌より少し高いぐらいなので、のぼせることもないだろう。

『スッポンポンにご用心』
ブダペスト市内の地下鉄3号線のカールヴィン・テール駅を下車し、ドナウ川方向に博物館通りを歩き、自由橋を渡りきった目の前にゲッレールト温泉がある。駅から徒歩で25分ほど。1918年、異教徒によって命を奪われた聖ゲッレールトの像が立つゲッレールトの丘の麓にあるこの温泉は、第一次世界大戦の負傷者たちのために造られたもの。アール・ヌーヴォーの代表的様式建築で、建物の中はステンドグラスがはめ込まれたアーチ型の高い天井、大理石の列柱、モザイク画、ビーナス像などがとても美しい。建物の中の脱着場に入り、周りを見渡すと白い小さな布製のフンドシを付けている人が大半と、何も付けていない人が少数いた。日本の温泉感覚で何も付けずに屋内浴槽へ入ると、左右に湯温の異なる長方形の広大な浴槽が眼下に入った。天井を見上げるとかなり高い。湯温の高い方を選び、浴槽奥へと進むと水深は首の高さまでくる。窒素ナトリウム、マグネシウム、カルシウムをふんだんに含んでおり、特に骨折やリウマチに効果があるといわれている。サウナ、マッサージの各施設も充実しているが、特に室内プールが圧巻。ガラス張りの天井からは穏やかな陽光が差し込み、精緻な彫刻が刻まれた柱、気品あるタイル張りのプールサイドは目を見張る。しばらく気分よく浸かっていたところ、どこからともなく、見知らぬオジサンが接近してきた。たわいもない話に付き合っていると、微笑みながら突然ふいっと右手を差し出し、なんと私の急所を触ろうとしたのだ。(?_?)改めて浴層内をぐるりと凝視してみると、殆どの人がフンドシを付けているではないか。スッポンポンになって入浴を満喫していたことで、ゲイと間違われてしまったのかもしれない。
                     
『世界最深の温泉湖』
ブダペスト市内のデアクタール広場バスターミナルよりバスで延々西へ4時間ほど走ったところにへービーズ温泉湖がある。途中、ハンガリー人が「ハンガリーの海」と呼ぶバラトン湖を左に見下ろすが、これは温泉湖ではない。規模としてハンガリー最大、世界で2番目に大きいといわれローマ時代より存在していたというへービーズ温泉湖(4.7ヘクタール)は森林に囲まれた湖水がそのまま温泉となっている。水深は最深37メートルほどで湖底46メートルほどから湧き出す温泉は30時間で入れ替わるらしい。湯温は人肌より少し温かいくらい。湖中央にある浴場小屋までは、地面から湖上に連なる長い渡り廊下を歩く。吹き抜けの浴場から水面下に設置された階段を下り、そっと首まで浸水しても足の踏み場はない。
小屋の外まで泳ぎ出て柱につかまりながら、太陽光に照らされた青緑色の水面下を覗くと底なしの世界がぱっくりと口を開けている。浮き輪を付けずにこの温泉に浸かるには、癒されるどころか疲れてしまうし、また結構勇気もいる。お薦めは、浮き輪を付けてプカプカ浮かび、森林や青空を眺めながらホカホカ温まること。
                                                                                出典:heviz official site